こんにちは、一般社団法人FLAP所属、みなかみ町地域おこし協力隊の中村です。
JR上越線後閑駅にある『後関駅ナカ学習室 みんなの放課後ターミナル』という高校生向け自習室の運営管理を担当しています。同時に、織りや、ダーニングと呼ばれる繕いなどの、ものづくりワークショップを通した交流の場作りを起業して行うべく、日々活動中です。
興味の向かう先はインドア系が中心。
歩くのも知らない事を調べる事も好きだけど、修学旅行や家族旅行といった節目の時以外は、あまり積極的に遠出しないタチだったりします。
当然(?)の事ながら、過去の経歴に『ツーリズム』は全く無縁のものでした。
そんな私が、ご縁あって一般社団法人みなかみ町体験旅行さんの『ヘルスツーリズム マネジメント研修』にお声がけいただきました。
お話を頂いた時点で詳細が明らかにされていない部分もありましたが(実地研修の場所とか……)、町内の多くの事業者の皆さんと仕事の目線を交えて意見を交わし、通常の業務では得られない経験ができる貴重な機会です。
また“体験”という意味では、ツーリズムとワークショップとで共通する部分もあると思い、即、参加を決意しました。
ヘルスツーリズム マネジメント研修って?
ヘルスツーリズムとは
ヘルスツーリズムとは、旅行という非日常的な楽しみの中で、旅行中のトラブルを回避したり、健康回復や健康増進を図るものをさします。そして旅をきっかけとして、旅行後も健康的な行動を持続することにより、豊かな日常生活を過ごせるようになることをいいます。(※)
みなかみ町では、2016年より『みなかみヘルスツーリズムプロジェクト』としてスタート。都市生活者に向けて、みなかみ町の自然や資源を活用したプログラムを体感してもらうことで、体感者本来の能力を取り戻すことを目指しています。
いま必要としているのは“プロ”と“プロ”を“繋ぐ存在”
みなかみ町は、森・川・温泉と、とても資源豊かな町です。そのため、宿泊施設や温泉施設、飲食店、山岳・ネイチャーガイドによるツアー、各種アクティビティと、観光業に深く関わるサービスも多く、またその道のプロが多くいらっしゃいます。
ヘルスツーリズム マネジメント研修では、そんな“各分野のプロ同士を結び付け、お客様のニーズに合わせたプログラム提供する”視点を持って動ける事業者や人材を増やすことで、より多様で連続性のある体験を作り上げることができる、との考えから開催されました。
研修を終えた今、その内容があまりに濃厚で全てをお伝えするのはとても難しいですが、できる限り学んだことをご紹介したいと思います。
研修日程概要
事前レクチャー……2023年2月15日
座学2回……2023年2月20日、27日
みなかみ町外実地研修1回……2023年3月6日~9日(宮古島 3泊4日)
振り返り・まとめ……2023年3月13日
研修、こんなことをしてきました!
研修0~2日目:宮古島での実地研修に向けての知識とグループワーク
まず、私も含めた今までツーリズムと関わりを持ってこなかった人たちは、「ヘルスツーリズムって?」「みなかみ町でのヘルスツーリズムとは?」「健康な状態ってどんな状態?」「みなかみ町とヘルスツーリズムの相性や根拠は?」など、基本となる部分を事前レクチャーで教わります。
その後、実地研修前の座学2回で宮古島で行動する班ごとに『自分たちのツアーを作る』グループワークを行いました。
グループワークでは、「ツーリズムというものを組み立てる際に大事な要素とは?」「どんなポイントに気を付けて候補を取捨選択していくか、何を大事にするのが良いのか」という部分を教わり“宮古島での実地研修では具体的にどんなポイントを重視し、内容を決めるか”を、各班で話し合います。
議題として与えられたポイントは“みなかみの課題”、“班のルール”の2つでした。また、3つ目のポイントとして“「知る」を体験する”が既定として提示されました。各班毎回積極的に意見を出し合い、あっという間に時間が経っていきます。
発表の中で頻出した課題キーワードは“共通の目指すビジョン”“町の良さ・問題点への認識”“道路標識や交通の便の現状”など。班のルールでは“楽しむ”“無理をしない”“愛”など、様々なキーワードが共有されました。
その後、各自が考えた“現地研修先ですること”を、班内で共有・決定し、自由行動時間での旅行計画を作成します。私たちの班は“島の人と交流する”“現地で生の経験をする”ことを重視し、海の生物や文化に触れたりスーパーに行くなどのプランは考えるけども、「絶対にこのプラン通りに動く!」とは思わずに過ごすことを確認しました。
研修3日目~6日目:宮古島とみなかみの違い、人と立場と思いの違い、思いの強さ
2023年3月6日朝、上毛高原駅に集合して新幹線・JR線・モノレール・飛行機と乗り継いで約7時間。宮古島空港に降り立つと、思ったより爽やかで暖かな空気と、別世界のような植生に色使い・建物の雰囲気です。
初日は移動と所信表明的な座学に夕食とシンプルな内容でしたが、お食事先で思いがけず店主に宮古民謡を披露していただいたり、おかみさんから三線を体験させていただいたりと、現地ならではの出来事に出会いました。
宮古島2日目は、『宮古の海をキレイにし隊』の皆さんによる新城海岸での早朝ビーチクリーンへの参加でスタート。
こちらの画像、集合場所からビーチに出て最初に見えた物です。
こんな感じのゴミの塊が、見渡す限りの海岸沿いに延々と続いていました。
“遠景の美、足元の現実”そんな言葉が頭に浮かびました。
今の季節は気候の影響で特に漂流物が多く来るそうですが、その中でもこの日はひと際多い、とのこと。
他にもビーチクリーンをしている団体はいらっしゃるそうですが、この活動が無ければ浜はどうなっているのか……と、思うと、背筋が凍ります。
現実を見せつけられた我々、分類を間違えるといけないのでひたすらペットボトルのみを拾います。
みなかみ組でも自然と役割分担ができてきて、ベテランの方のお手製アイテムが大活躍し、子どもたちは遊ぶようにゴミ拾いをしているのが印象的でした。
2時間の活動後に参加している方々とお話すると、その多くは移住者で、地元民による参加もあるけども比率は低いとのこと。そして、参加理由で良く聞こえてくるのは「宮古への恩返し」の言葉でした。
対してみなかみ町参加者のコメントとしては「河川の上流は海に繋がっていることの自覚について」や「かつてのゴミに対する町民意識を知るエピソード」の話が耳に残りました。
その後、ビーチクリーンで教えていただいた宮古の人達御用達スーパー『あたらす市場』で土地の食に触れたり
現地ならではの商品がいっぱい『ドン・キホーテ宮古島店』で新鮮な海鮮丼を頂いたりお土産Tシャツを選んだり
宮古島市体験工芸村で、琉球王朝時代の王族の衣装を着る琉装体験をさせていただいたりするんですが、この琉装体験で着付けをしてくださった方が、宮古島で育ち、沖縄本島から戻ってきた方でした。
3人分の着付けをしていただく中、生い立ちや仕事に対する思い、伝統衣装を残すために“現在のニーズも取り入れて変化することを恐れない”大切さなどを伺うとともに、地元の方視点での“国内外の旅行者のゴミの扱いへの意識”について、大事なお話もお聞きすることができました。
その先も、様々な方とお話を伺う機会を頂きました。
ガーリックシュリンプで有名な、ハワイ料理屋さんパーラーレッドドラゴンの店主からは節目の時を向かえるたびに起きた、不思議な出来事の話を。
港で偶然の出会いを果たしたお店の方からは、サバニ(南西諸島で古くから使われていた漁船)のことやお仕事のこと、漁師さんの視点での環境問題への活動に関する考え方を。
宮古島創作芸能団 んきゃーんじゅくさんからは、一振りで伝わる熱量や表現力の素晴らしさとともに伝統を後世に残すことへの思いを。
宮古列島の1つ大神島では、島にずっと暮らしている90代のおばあ様から、その人生や聖域大神島で生きる人としての想いを。おぷゆう食堂の方から、島民の暮らしのことや思い出を。
クバの杜プロジェクトin宮古島に関わる皆さんからは、神事の材であり民具にもなるクバを“文化を残し続けるために、守る活動をする”循環の考え方と、その熱量を。
他にも、同行者の皆さん含め沢山の方とお話させていただいました。そして、様々な立場での考え方や思い、そしてこの先を生きるために何をしていくかを伺い、考え方の違いを認めた上で適度な距離間を保ちながら、互いの活動を続ける方法を教えていただきました。
研修7日目:振り返りとまとめ
本当は1週間いたんじゃないの? と、いうくらいに濃密だった3泊4日の実地研修。振り返りの日に参加者全員から出たのは“人”というキーワードでした。
実際、旅行先で印象に残っているのは、どれも“誰と何をし、何を感じたか”という事です。
人との出会いと出来事の内容が濃密であるほど「楽しい」と感じ、そこで得た物が楽しいほど「また来たい」と思える。それは、みなかみ町に訪れた人達にとっても同じ事が言えると感じました。
“訪れた人達にとって興味のある分野を知る町の人と繋ぎ、その町の人が次の興味の先へ導く”
そんな“人の繋がりの連鎖”をツアー提供者として引き起こすことができれば、体験した方に「次はどんな人と出会えるんだろう?」「どんな体験が待っているんだろう?」と、思ってもらえるんじゃないでしょうか?
これを実現するには、みなかみ町にはどんな人がいて、どんな事を考え、どんな事をしているのか、町内の人々の事を良く知るのがとても重要になってきます。そうして、お互いを良く知る事によって1人1人が町を知る事に繋がり、結果的に研修1回目で出た“みなかみ町の課題”の解決にも結びつくのだと思います。
参加してみて
今回の研修は、頭の先からつま先まで、全身を使って経験を吸収するような、濃密な時間でした。参加者も、現地でお世話になった方も、導かれる様に出会った方も、全員がご自身の信念をしっかり持って行動されている方ばかりで、勉強になるばかりでなく「次にどうしたら良いか?」を自然と考えるきっかけになりました。
すでに、この研修から先のステップの準備が進められています。どういった形になるかは、まだこれからですが、今回の学びをしっかり活かして次へ進めていきます。今後の展開にご注目ください。
私個人としても、町内の交流を深めると同時に、個人にとどまらない“繋がりある楽しさの提供”をする方法を模索し、実践していきたいと思います。
紹介
研修の講師陣と、本文中に名前を挙げさせていただいた先のご紹介です。「どんな事をしているの?」「この活動が気になる」と思ってくださった方は、ぜひご覧になってみてください。
《ご注意》敬称略。2023年3月に確認したアドレスへリンクさせています。
研修講師陣
本文中でご紹介した先
後関駅ナカ学習室 みんなの放課後ターミナル(みなかみ町の高校生向け自習室)
日本ヘルスツーリズム振興機構(※『ヘルスツーリズムとは』の説明文引用元)
宮古の海をキレイにし隊(公式サイト/Facebook/Instagram) →今回参加の様子を、Facebookでタイムラプス動画として見ることができます(活動日:2023年3月7日)。
ファーマーズマーケットみやこ「あたらす市場」(JAおきなわ店舗ページ)
ドン・キホーテ宮古島店(公式サイト店舗情報)
宮古島市体験工芸村(公式サイト)
パーラーレッドドラゴン(公式サイト)
クバの杜プロジェクトin宮古島(クラウドファンディングページ)
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