「地球に優しく」なんてキレイゴト!私にはムリだと思っていました。
エコって大変。布おむつは早々に挫折してしまった。やっぱり汚れるものは使い捨てしたいし、ビニール袋に入れたい。自然由来の素材の商品は素敵だけど、よりお手頃価格のプラスチック製品についつい手が伸びてしまう。「環境に優しい暮らし」なんていうものは、現実的じゃない。
地産地消というけれど、地元のものだけで、ほんとに満足できるのかな? 恥ずかしながら、少し前の私はそんなふうに思って生活していました。
世界中から何でも安く手に入り、気軽に捨てて、毎日大きなゴミ箱がいっぱいになる。それが当たり前の日常となってしまうと、なんの疑問も持たなくなっていました。
自然は誰かが管理してくれるもので、エネルギーや食料はお金で買うものでした。東京での生活ではハードルが高すぎて、自給自足するなんていうことは、とても自分と関係がある話とは思えなかったのです。
大自然に心ひかれていく。みなかみ町への移住で変わった意識。
子どもたちが赤ちゃんを卒業し、元気に駆け回るようになると、だんだん東京が窮屈に感じられるようになりました。自然の中で過ごすとリラックスできるだけでなく、子どもたちがいつまでも面白そうに遊んでくれるので、充実感もありました。
広々したところで自然と遊びながら暮らしてみたい!そう思った私達は、通勤も可能で、かつ大自然に囲まれた群馬県みなかみ町に移住を決めました。
12月に引っ越してきた私達を迎えてくれたのは、記録的な大雪。 町も、遠くの山々も全てが真っ白になり、別世界にやってきたかのようでした。
雄大な川や湖、神秘的な森に圧倒され、可愛い動物たちを見かけては、大はしゃぎ! 慌ただしく始まった新生活でしたが、里山の風景と温泉が、日々の心を穏やかにしてくれました。自分も自然の中の一部なのだと感じるようになりました。この環境を失わないために、何か始めなきゃ。と思ったのでした。
豊かな自然と、それを守り活かす人たち。
みなかみ町は、山々に囲まれた水源の町。豊富な自然資源に寄り添うように、縄文時代から人々が暮らし、人と自然が互いに健康で持続可能な関係を築いてきました。
赤谷プロジェクトや谷川岳エコツーリズムに代表されるような、自然を守り活かし広める活動や、将来地域の担い手となる子どもたちへの環境教育にも熱心で、ユネスコエコパークとSDGs未来都市に選定されています。
役場や民間、世代など立場を超えて町全体が、移住者を歓迎してくれます。チャレンジに寛容で、全力で応援してくれます。そのおかげで、豊かな資源を生かした新しいビジネスがいくつも生まれているのです。
みなかみ町には、私達もつい何かを始めたくなってしまうな、ワクワク感が漂っていました。
私にも何かできることはない?SDGs講座への参加。
そんな中、移住・起業支援の方が紹介してくださったのが、「みなかみ町ユネスコエコパーク・SDGs普及コーディネーター養成講座」。その時はまだ、ユネスコエコパークについてもSDGsについてもほとんど知りませんでしたが、「みなかみ町を豊かにする取り組みを、共に行っていきませんか?」というメッセージに惹かれ、受講させていただくことに。
講座はSDGsカードゲーム体験会から始まり、基礎編・応用編のお話があり、最終日には各々がこれまでやこれからやりたい活動について、みんなの前でプレゼンテーションするという流れでした。私以外の受講者は、すでにSDGsに繋がる活動をされている方ばかり。私にもできることがあるのかな?と緊張しながらのスタートでした。
心に刺さった「私が起点」というキーワード。
初日のカードゲームで早速、「世界はつながっている」「誰一人取り残さない」「私が起点」というSDGsのキーワードを体感することができました。
でもこの言葉たちを聞くと、私は耳が痛くて…特に「私が起点」は響きます。これまでも様々な問題を知ってはいたけれど、見て見ぬふりをしていたのですから。
罪悪感と義務感から、何かしなくちゃ!とは思うものの、いまだにちょっと憂鬱でした。
私にできそうなことといえば、「我慢すること」しか思いつかなかったからです。
でも、講座の講師であるてっちゃん(塩野先生)のユーモアも交えた興味深いお話と、最終日の皆さんの発表から、「私が起点」のはじめかたのヒントをもらえた気がしました。
義務だからじゃない?自ら進んでしてみたくなる理由。
印象的だったことは、皆さんが羨ましいほどに活動を楽しんでいるということ。SDGs達成に向けた様々な取り組みは、 「自然の中で遊ぶことが気持ちよく楽しいから。」「毎日いただくお水や農産物が美味しいから。」「美しい風景に心癒やされるから。」「里山らしい生活が心地よいから。」、自分自身が日々自然から恩恵を受けているので、無理に意識せずとも大事に思って守りたい気持ちになっているようなのです。そこから皆さん、この貴重な地域の自然資源をどう活かし、どう守るかを考え、行動されているのでした。 研修で得た一番の財産は、素晴らしい方々との出会いです。 私がみなかみ町の皆さんから学んだ、「私が起点」のはじめかたを2つ紹介させてください。
「私が起点」のはじめかた①:まずは、自分が楽しむ!
「私が起点」になってまず最初にするべきこととは、楽しむことかもしれません。
まずは自分が、自然の恩恵をめいっぱい受け取ること。自然に対して自分と対等な、またはそれ以上の価値を認めること。自然が滅んだら可哀想だからではなくて、滅んだら自分自身が困ることがはっきりとわかっていることが大事なようです。
「しなきゃいけない」のではなく、「自分にとって必要だから、どうしてもしてしまう」という感覚。だから活動が無理なく始まり、続くのでしょう。
では、楽しむためのコツはなんでしょうか。 それは、消費と生産、両方にバランス良く関わることだと思います。
「私が起点」のはじめかた②:自分でつくってみる。
そう思ったきっかけは、研修で出会ったある方のお宅に招いていただいたときでした。 地元の建築家さんとリノベーションしたという古民家は、新しくも懐かしい雰囲気。薪ストーブがじんわりと体を暖めてくれました。家主さんご夫婦は、地元の作家さんから直接購入されたという素敵な器に、ご家族の育てた食材を使った美味しいお料理をきれいに盛り付けて出してくれました。大粒でふっくらとした大豆のトマト煮、猟で採れた鹿肉の赤ワイン漬け、丸鶏のロースト、自家製の梅干し…どれもとても美味しくて、育てたお米からできたというお酒がぐんぐん進んでしまいます。翌朝、ツヤツヤのご飯の上に庭の鶏の新鮮卵をかけてもらい、昨日の丸鶏のガラスープと一緒にいただきました。
そばにある資源を活かし、自ら手入れして育て、自然の恵みに心身が満たされる暮らし、これがSDGs未来都市であるみなかみ町の暮らしです。自身が作り手となり、他の作り手ともつながり、一緒に楽しみ味わう。こんな豊かな暮らしが密やかに行われていることを知って、宝物を見つけたような気持ちになりました。
夜は地域の教育の話題で盛り上がり、私は子育ての悩みを聞いてもらいました。「子どもは地域で育てるのもの」という優しい言葉をいただき、胸が詰まりました。居場所がある、ここでなら安心して子育てができると思いました。「誰一人取り残さない」というキーワードを思い出しました。取り残されないのは、私自身もでした。
自分も作れば、それはすぐに自分事になります。作るものは、農産物だけじゃなくて、みなが居心地のよい地域や、環境に優しいライフスタイルもそうです。
自分たちでつくること、自分たちで考えて動くこと、仲間の一員として協力すること。つまり「私が起点」になること。億劫だと思い込んでいたことが、楽しくやりがいがあり、人生を豊かにすることだと思い知らされました。自分でも何か価値を生み出せると気づくことは、自己効力感や自己肯定感を育みます。自分も仲間の一員だいうことは、責任も伴うけれど、居場所があるという安心感を得られます。SDGsの達成に向けた取り組みは、自分が幸せになることとちゃんとつながっていたのでした。
ささやかながら、始めてみたこと。
我が家に帰って見渡してみると、本当に必要で心から気に入っているものは少ないことに気が付きました。安易に増やしたプラスチック製品、過剰に使ってきた洗剤やお化粧品。そうしたものは手放して、もっとシンプルに暮らしたいと思い、整理しました。これからは自分にゆかりのある地域の、愛着が持てる商品を選びたい。地域の活動や畑にもチャレンジしてみたい。私に変化をもたらしてくれた、みなかみ町の素敵な人たちとその活動を、これからも拙文ながら発信していきたい。
憂鬱だった気持ちは晴れて、今は楽しみなことばかりです!
執筆:清水優佳
出会った素敵な方たち・事業者さん
・一般社団法人みなかみ町体験旅行 https://m-tr.jp/
・横山峰弘さん http://www.gon-ff.com/?p=142
・泊まれる学校さる小 https://www.sarusho.com/
・ユアン クレイグさん https://euancraig.web.fc2.com/index.html
・ホテルサンバード https://hotel-sunbird.com/
・別邸千寿庵 https://www.senjyuan.jp/
・ワンドロップ https://onedrop-outdoor.com/
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