みなかみ町ローカルチャレンジ事業「FLAP」では、みなかみ町への移住・みなかみ町での起業の支援を行っています。 2020年は社会情勢が大きく変化して、働き方だけでなく暮らし方の見直しも進んでいます。 暮らし方の変化として地方への移住を通して、より自分たちらしい暮らしを実現する方も増えています。
みなかみ町でも移住者は増加傾向にあります。みなかみ町の移住者の傾向でみられるのは、自然の中で自分たちの求めるものに、積極的にチャレンジしていくアクティブな方が多いと感じます。今回東京から12月にみなかみ町へ移住されたばかりで、みなかみ町の暮らしを早くも満喫されている清水さん一家の奥様優佳さんに、移住についてのコラムをいただきました。
夫がテレワーカーとなり、自然の中での遊べるライフスタイルを実現可能に!
私達は2020年12月にみなかみ町へ引っ越して来ました。34歳の夫婦と、6歳&3歳になる男の子達の4人家族です。出身は千葉で、仕事の関係で神奈川、東京、カリフォルニアに住んでいました。自然の中で思い切り遊ぶこと、またはのんびりと過ごすことが大好きで、週末には海や山に行き、連休は旅行がてら海外や地方に住む友人を訪ねて周っていました。夫は東京に本社がある会社員で現在は完全テレワークで働いています。
週末ごとの旅行で地方ならではの豊かさを発見し、「広々した」「山が見える」「身近な自然と気軽にすぐ遊べる」場所に、いつか住みたいねと夢だけは膨らませていました。それでも、仕事のため東京を離れることはありえないと思い込んでおり、東京の持ち家を手放す発想もなかったため、最初に思いついたのは週末田舎暮らし。しかし毎週末の予定がそれで決まってしまうことや、2拠点の移動&維持コストを考えるとなかなか実行できずにいました。
そんななか、新型コロナウィルスが流行し、夫の仕事が完全テレワークとなります。外出自粛期間中に気づいたことは、私たちの生活はコロナ禍でもほとんど変化がない!という事実でした。
生活に必要なこと…仕事、勉強、買い物、エンタメなど、もともとオンラインで済ませることが増えてきていたので、外出できないことで特に不便は感じなかったのです。これは逆に言えば住む場所はどこでも関係なくなってきたということです。
片品村へのお試し移住のチャレンジから始めました。
私たちは、仕事や教育や利便性のために、東京に住む「べき」だと考えて家を買いました。なのに生活に必要なことはだいたい家で済ませてしまい、結局週末は地方にばかり遊びにいっている自分たちにとって、背伸びして東京に住み続ける意味はあるんだろうかと、考え直してしまいました。ゼロから考えて、今の自分たちに最適な場所、本当に住みたいところは、ここではないんじゃないかと。
我が家にとって、その時点での東京に住み続けることの縛りは子どもの幼稚園と習い事のみ。その2つが夏休み&コロナ禍で休止になったタイミングで、お試し移住をしてみることにしました。
お試し移住先はみなかみ町と同じ利根沼田地域の片品村です。 キャンプや温泉に何度も遊びにきていて、山の気候と風景がとても気持ちいい場所として選びました。
空き家バンクでちょうど良い貸家を見つけ、優しい大家さんとご近所さんにも恵まれ、美しい大自然の中で、素晴らしい夏休みを過ごすことができました。
お試し移住で、山暮らしが大好きになってしまった私たち。幼稚園が再開したあとも、家は借り続けて週末は片品村に通いました。結果的に週末田舎暮らしが実現したわけです。
噂に聞く田舎暮らしのデメリット(都心に比べてウェットな人付き合い、買い物する場所の少なさなど)もある程度確認でき、かつそれらが自分たちにはさほど問題でないとわかりました。
しかし予想通り、週末ごとの移動は大変で、それぞれの地域との関わりがどちらも中途半端になってしまうことも気になり、本格的に移住を検討し始めました。
地方移住が自分たちにマッチするか様々な角度から検討しました。
いざ本当に生活の拠点を移すとなると、お試し移住とは異なるいろいろな不安が出てきます。
1「このテレワークの状況はいつまで続くのか」 2「地方で子育てしていくのはどうなのか」 3「息子たちは引っ越しが辛くないか」 4「実家との距離が離れても大丈夫か」 5「すぐに飽きて都会が恋しくならないか」 6「田舎の人間関係はどうか」 7「すでに持っている東京の家をどうするか」 などなど…様々な点を洗い出して夫婦で話し合い、落とし所を決めていきました。
1「このテレワークの状況はいつまで続くのか」 まず夫の仕事を変えずに移住できることが前提条件でした。そのためのクリアするべきハードルの出発点として、「テレワークの比率はコロナ前よりも格段に高まるが、対面での仕事の可能性は0にはならない」と仮説を置きました。つまり、「明日仕事で東京に行く必要がある」となったときに大きな負荷なく東京に出向ける距離で、交通インフラが整っていれば問題なく移住できるということです。逆に言うと完全にテレワークで仕事ができると確信が持てれば、北海道や沖縄、東南アジアなども移住検討先になり得たと思います。
2「地方で子育てしていくのはどうなのか」 学校では多様な人間関係、社会性を学んでほしいので、人数が少なすぎるのはどうなのかなと思っていました。地方では部活や習い事の選択肢が少ないことも予想されます。息子に聞いたところ、バスケットボールと空手とスキーがやりたいとのこと。大学は好きなところにひとり暮らしすれば良い。高校は、下宿という方法もある。塾にはいかず、これまでと同様、勉強は通信教育で。英語はロゼッタストーン、プログラミングは無料のウェブサイトで触れていくことにしました。
3「息子たちは引っ越しが辛くないか」 「習い事はスキーしかできないかもしれないけどいい?」「幼稚園が変わって、習い事もやめて、お友達と離れてしまうけど大丈夫?」と聞くと、「早く山に引っ越したい!今の習い事はやめてもいいから山に住みたい!」「いつも公園やキャンプですぐに友だち作れているよ?(何が問題なの?)」との心強い返事!そう言わせる大自然の魅力ってすごいです。
4「実家との距離が離れても大丈夫か」 コロナ禍以前には1〜2ヶ月くらいに一回は遊び行っていましたが、同様の頻度であれば群馬からも通えます。むしろ、親族で全然違う場所に住んでいる方が、それぞれの地域に遊びに行く楽しみができます。母も、「今一番住みたい場所に住むのが一番いい。それができる時代なのだから。」と後押ししてくれました。ただし、両親に何かあれば、すぐにかけつけられる場所、2〜3時間で行ける場所が安心だと考えました。
5「すぐに飽きて都会が恋しくならないか」 東京は確かに魅力的で、たまに恋しくなるでしょう。でも人混みが苦手な私たちの実績として、東京らしい場所に遊びに行くのは1ヶ月に数回程度。それなら東京に住まなくてもたまに遊びに行ければOKです。お試し移住をしてみて、都会と田舎のどちらを「日常」にし、どちらを「非日常」にしたいかといえば、私たちにとっては、大自然の気持ち良い暮らしが「日常」の方が「豊か」だという実感がありました。都会が「非日常」になれば、今回はこのエリアを街歩きしようと計画したりして、旅行みたいでもっと楽しくなるかも!子どもには、田舎と東京の暮らし、どっちも体験してほしい。東京も見て、地方と都会の違いに目を見張ってほしい。自分たちも引越のたびに気づきや学びが得られたので、同じ体験をしてみてほしいと思いました。
6「田舎の人間関係はどうか」 人間関係の悩みは東京でも変わりませんが、私たちは東京での人間関係に少しだけ物足りなさを感じていました。もちろん周囲の人には大変お世話になり仲良くしていただきましたが、もっと世間話だけでない深い話をしたり、一緒になにかに取り組んだりできると面白いなと思っていました。東京だとそれぞれの暮らしが交わる場面はなかなかないように思います。
これまで暮らしたことのある地域では、「移住者」という共通点だけで仲良くなれ、一緒にその土地の楽しみや苦労を分け合っていました。また地元のみなさんが自分ごととして村の政治や経済、将来を語ってくれました。そんな比較的小さな自治体ならではの、住民同士の一体感に、私たちはワクワクするのでした。
7「すでに持っている東京の家をどうするか」 現在の家は売却することにしました。幸い、土地が値上がりしており、売りどきと判断しました。 戸建てであったため、賃貸に出すのも手間がかかり、賃料査定もしてみましたが、利回りもあまり高くありませんでした。もし、また東京に住みたいと思ったときには、その時のニーズに合わせた最適地に最適なサイズの家を借りる(買う)ということを考えています。
こうしてみなかみ町に移住を決めました!
上述のように、私たちは東京と完全に縁を切れるわけではありませんでした。そこで移住先として見つけたのがみなかみ町です。
東京からの距離感、自然の豊かさ、生活環境のバランスが自分たちにちょうどよい町でした。
もともと観光地だからか、外部からの新しい人や物事にとても寛容で、町役場の方をはじめ、ご近所さん、コンビニの店員さんまでもが親切で優しい!
ユネスコエコパークやSDGsの取り組みなどにチャレンジし続けている。
町政が他人事でなく身近に感じられる。
様々な分野で起業している人がおり、話が聞けて刺激的。
子どもの習い事の選択肢が意外と豊富。
農産物、特にりんごときのこがものすごく美味しい。
山々が近すぎず遠すぎず、一番美しく見える距離感のような気がする。
amazonの荷物も翌日に届くし、ベイシア&カインズが便利で月夜野エリアは積雪量も少なく大変暮らしやすい。
移住が叶わなかった片品村、川場村、高山村、昭和村など、これまた美しく魅力的な村々に囲まれ、しょっちゅう遊びに行けるのも大きな価値を感じる。
新幹線で快適に気軽に東京へ行けるなどアクセスが良いのにもかかわらず、圧倒的な大自然が身近に!
まさに私たちが求めている環境が揃っていました。
仕事と並んで重要視していた子育て環境も大きな魅力でした。みなかみ町はアクセスの良さから進学や通学も諦めず、みなかみならではの習い事(スキー、ホッケー、バスケ、居合など)があります。
なんと3人制プロバスケットボールチームがあり、プロの先生にバスケットボールを直接教えてもらえる教室があることには長男大喜び!月夜野エリアでは子どもの人数も少なくなく、諦めなければならないと思っていた習い事や子どもの人数の問題もクリアされました。
これからますます大事になっていくSDGsも学べ、自然の中の暮らしで実践できます。親がテレワークでも、教育のために移住を諦めている方もいるかと思いますが、みなかみ町では東京とは違ったけれども面白い子育て環境がありました。
なにより一番の決め手となったのは、みなかみ町で出会えた方々がとても素敵だったことです。オンライン移住相談会で相談に乗ってくださった役場移住担当の中山さん、移住促進に取り組む一般社団法人FLAPの鈴木さんがとても親切かつパワフルで、驚くほどのスピードで縁も所縁もなかった私たちをみなかみ町に引き込んでくれました。
同世代ということもあり初対面と感じないほど親近感を持てましたし、みなかみ町の「若さ」を感じました。同じ年頃のお子さんの子育て話も聞けたことで、その地で暮らしていく具体的で前向きなイメージを持つことができました。
私たちはテクノロジーの恩恵の一つとしての、新しい暮らし方のようなものを探していたわけで、みなかみ町を引っ張っていらっしゃるお二人の行動力や先進的なお考えは大変魅力的でした。
また、移住して地域の間伐材を活用してエッセンシャルオイルを作られているLiccaの長壁さんご夫婦にもお会いしました。工房を見せていただきながら、移住の話や起業の話、地域の話など、色々お話を聞かせてもらい、感激!
みなかみ町に移住してきた方々は、都会から逃避してきたのではなく、それぞれがやりたいことを実現するために、積極的に楽しむために、この地を敢えて選んだのだということ、そしてそれを受け入れ、応援してくれる温かい住民の方々の存在があること。素晴らしい町だなと思い、その日のうちにここに住みたいという気持ちは固まりました。
移住にあたって苦労した点
一般的な引っ越しに伴う出費と労力は確かにありましたが、幸運にもほとんど苦労せずに済んでしまいました。引越前も後も、中山さん・鈴木さんがまめに連絡をくださり手厚く面倒をみてくださったおかげです。コロナ禍での近隣挨拶アドバイス、雪かきや水道の凍結防止指南、バスケットボールスクールとの引き合わせなど…本当にお世話になりました。テレワークセンターの方ともつないでいただき、現在夫のオフィスとして快適に利用させてもらっています。
心配していたご近所さんとの関係も、好調なスタートを切れたと感じています。想像以上に温かく受け入れてもらえ、早速野菜をいただいたり子どもに優しく話しかけてもらったりして、家がもうすっかり、ほっとする居場所になりました。こんなに移住者に優しい町はないのではないでしょうか。
唯一、賃貸物件があまり選べないという点は少々困りました。私たちは、幸いなことに手頃な物件を希望の場所で借りることができましたが、戸建てタイプだと畳の和室の家(床座、布団利用が前提、押入れ収納のみの作り)がほとんどのようです。最近では一般的な暮らし(椅子、ベッド、クローゼット使用、荷物多め)をフィットさせるには少し工夫が必要です。
田舎暮らしを始めて、日々感じている暮らしの変化
まず、とにかく子ども連れでのおでかけが格段に楽になりました。土地が広々しているので子どもが急に走ったり立ち止まったりケンケンパを始めても、何かにぶつからずに済みます(同じことを人混みのデパ地下でやられた辛い思い出があります)。
公園には「ボール遊び禁止」「木登り禁止」の看板はありません。のびのび遊べるとはこういうことかと実感しました。
また、地方での車生活は本当に快適です。子どもの腕を無理やり引っ張らなくても、目的地までに迷子になる心配はなし。車内はプライベート空間なので、大声で歌っても、笑っても、泣いても、オムツを替えても、誰にも迷惑をかけないのが気楽です。大きいおもちゃも着替えもガンガン運べます。
東京では道も狭いし歩行者も多いしで運転が怖かったのですが、こちらではドライブを楽しめるようになりました。どこへ行っても無料駐車場がふんだんにあるので、時間や料金を気にせず遊べます。
夜はしっかり暗くなるので星がたくさん輝いて、雪をかぶった家々、山が広がる風景は、本当に美しくて壮大なので、よく言われることですが実際に、自分の悩みとかちっぽけに感じます。
あとは気づけば温泉に週5で入っていました(笑)。格安町営温泉から本格旅館まで色々楽しめて、最高に気持ちがいいです。雪や月を眺めながら露天風呂で毎日のようにリフレッシュできるなんて、贅沢すぎます。
野外活動が快適で楽しいので、自然と運動量が増えました。テレワークでこもりがちだったので、テレワークセンターでいろいろな人と知り合えて雑談できるのも大変嬉しいことです。 都会に比べて目に入る情報量が少ないので、目の前のものごとに集中しやすいように感じます。
心も体も頭も健康になって、余裕が生まれるのを感じています。
これからみなかみ町で、景色の素敵なところで、子どもが子ども時代を思い切り楽しめる家づくりをしてみたいです。また自伐型林業のグループに参加し、副業で木を生かしたビジネスに携わりたい。ご当地アルバイト、地元の食材を使ってのお菓子やパンづくり、大自然遊びいろいろなチャレンジをおこなっていきたいです。
地方移住を検討されている皆さんへ
ゼロから自分に最適な環境を考えるのはとても難しいことです。いくらシミュレーションしても、情報を集めても自分たちにとって最適かどうかはわかりません。ですので、ぜひお試し移住をすることをおすすめします。
また、移住を決断する際には、10-30年などの中長期の視点を持たずに5-10年程度の短期の視点で考えてみてください。骨を埋めるつもりで移住を検討するときっと動けないと思いますので、「移住が肌に合わなければすぐに撤収しよう。」くらいの心構えで検討してみてください。
ぜひ皆さんに合う土地を見つけて、自分たちのライフスタイルを実現させてください!
執筆:清水優佳
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